りぼんの読書ノート

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果てしなき石ノ森章太郎(ヤマザキマリほか)

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NHKのEテレで放送された「「100分de名著」の「石ノ森章太郎」の回をもとにして出版されたアンソロジーでは、あらゆるジャンルに取り組んだ不世出の「萬画家」石ノ森章太郎のレガシーについて、多様な世代の4人の論者が語り尽くしています。

 

さるとびエッちゃんヤマザキマリ

ほとんど知らなかったのですが、不思議な魅力を持った作品のようです。ヤマザキマリさんいわく「全編ギャグだらけなのに寂しさが醸し出されて」おり、「ひょうひょうとしたシュールさに鋭い批判精神が込められて」いる作品だとのこと。紹介されているエピソードからも、大活躍するのに善悪を判断せず、クールで目立たない存在で居続けるエッちゃんの不思議な魅力がうかがえます。追随する作品が出なかったというのも納得できます。

 

サイボーグ009名越康文

能力が欠陥であるが故に苦悩する主人公たちは魅力的でした。この作品が未完で終わったが故に生まれてきたという作品として、『デビルマン永井豪)』、『AKIRA(大友克洋)』、『風の谷のナウシカ宮崎駿)』などがあげられていますが、これらの作品には同じ空気を感じます。

 

佐武と市捕物控夏目房之介

大人向けのTVアニメともなった本作は、2人の主人公の人物造形の点でも、浮世絵を思わせる作画やコマワリも、単純な勧善懲悪では終わらないストーリーという点でも、同時代の『カムイ伝(白戸三平)』や『火の鳥手塚治虫)』と並んで青年マンガというジャンルを打ち立てた作品といえるようです。

 

仮面ライダー宇野常寛

マンガやアニメというより「特撮ヒーロー番組」の印象が強い作品ですが、本稿の書き手は「ジャンル影響力という点では漫画家としてよりも評価が高くなるのではないか」とまで述べています。もっとも現在にまで至っているTVシリーズが、石ノ森章太郎の遺伝子をどこまで引き継いでいるのかは、微妙な気もします。

 

2022/1