りぼんの読書ノート

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けむたい後輩(柚木麻子)

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2010年にデビューした著者が2012年に著した第4作ですから、まだまだ初々しさが残る作品です。しかしそれだけに、小説家となった著者が書きたいテーマがストレートに伝わってくるようです。

 

横浜の名門女子大に入学した世間知らずのお嬢様・真実子は、ずっと憧れていた先輩と運命の出会いを果たします。そのお相手は、14歳で詩集を出版して早熟の天才ともてはやされた過去を持つ栞子なのですが、彼女はもうオーラを失いかけていました。浮かれ騒ぐ日々の中で彼女の才能は枯渇してしまったようです。そんな真美子を心配して栞を憎むのは、美人で頑張り屋で女子アナを志望している幼馴染の美里。

 

本書では、ロマンチストの真美子と、リアリストの美里と、ナルシストの栞子という女同士の三角関係が描かれていきます。栞子のダメぶりは情けないし、真美子の献身は痛々しいし、美里の心配はもどかしい。いつまでも勝負のつかない三すくみの関係に耐え切れなくなったのは、やはり栞子でした。そしてそのことが真美子の成長を促すのです。

 

女同士の関係を描いた物語ですが、男たちの存在も攪乱要因となっていたようです。男から信奉されないと生きていけない栞子なのに、彼女に近づいてくるのはカスばかり。浮気性の蓮見教授や芸術家気取りの黒木らは脇役でしかありませんが、その後の作品を読むと、このようなダメ男への嫌悪感こそが著者の原点であったようにも思えます。

 

2021/12