りぼんの読書ノート

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チンギス紀 10(北方謙三)

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西方の大国であったナイマンを倒し、長年のライバルであったジャムカを葬ったチンギスは、文字通りの草原の覇者となりました。かろうじて独立を保っていたメルキトのアインガも、ついにチンギスへの臣従を決意します。広大な草原は、チンギス直轄領を中心として、東部が弟たちの、西部が息子たちの領地となりました。そしてチンギスは南方の超大国である金国との戦いを想定して、従来の騎馬隊に加えて、ボレウに歩兵部隊を、ナルスに工兵部隊を整備するように命じます。モンゴルが草原を出る日が近づいています。

 

その一方で、遥かな西方の物語も始まりました。現在の中央アジアからイラン北部にかけての広大な地域を支配するホラズム・シャー国は、アラーウッディーン帝のもとで最盛期を迎えています。後にモンゴル軍の侵入に抵抗することになるジャラールッディーン皇子は、まだ後継者と目されていない10歳の少年にすぎません。護衛のテムル・メリクとともに旅に出た皇子は、東方で運命的な邂逅を果たすことになります。

 

草原から西方へと向かった者たちも少なくありません。ケレイトの王弟であったジャガ・ガンボは西遼のカシュガルにたどり着き、草原との交易を望むムスリムの商人アサンと出会います。バイカル湖畔に隠棲するトクトアのもとで苛烈な修行を積んだジャムカの遺児マルガーシは、東方の旅から戻ったジャラールッディーンと行動をともにするのです。新たな人間模様が、新たな物語を開いていくことになるのでしょう。

 

2021/12