りぼんの読書ノート

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リストランテアモーレ(井上荒野)

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目黒駅周辺の路地には小さいけれどお洒落なレストランが何軒かあって、時々利用する地域です。本書の舞台はそのあたり。姉の偲と弟の杏仁が切り盛りしている「アモーレ」は、四季折々の食材を用いた料理で繁盛しているのですが、ハンサムな杏仁めあての女性客も多そうです。そんなレストランを舞台に繰り広げられる恋模様の物語。 

 

各章のはじめに「当日のおすすめメニュー」に加えて、「罵る女」とか「ひみつが多い女」とか「不毛な男」などと表示されており、そこに記された男女が各章の語り手。シェフの杏二は奔放で色々な女性を相手にしているのですが、ひょんなことから最も苦手とする「重い女」と同居することになってしまいます。姉の偲は杏二の師匠である松崎さんに一途な思いを抱いているのですが、彼は妊娠させた女性と結婚するハメに陥ってしまいます。はたして2人の恋はどのように進展するのでしょう。 

 

ローズマリー風味のティジェッレ」とか「野生アスパラガスのタリオリーニ」とか、登場する料理がどれも美味しそうです。姉弟を含む登場人物たちの恋路は思うように進みませんが、美味しい料理を食べれば幸福感に満たされそう。そんな美味しい料理の作り手である杏二の恋愛が一番満たされないのは皮肉なものですが、仕方ありませんね。どうやら彼が一番気になっているのは姉のようなのですから。料理と恋愛の相性の良さを再確認させてくれた作品でした。 

 

2020/2