りぼんの読書ノート

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鬼仙(南条竹則)

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1993年に『酒仙』で「第5回ファンタジーノベル大賞優秀賞」を受賞した著者は、以来、中国古典に想を得た作品を多く書いていますが、本書もその一冊。どこまでが中国古典なのか、それとも全てがオリジナルなのか、混然一体となっていた判別しがたい・・というのは、褒め言葉です。

「鬼仙」
役所に取り憑いた女の幽霊といっても、誰かを恨んだり呪ったりするわけではありません。死後に仙道を学んだ霊として、彼女なりに役所を守り続けているのです。正義感は強いものの、霊を鎮めようとする役人を懲らしめようとするのですが・・。命を救ってくれた主人を守ろうとする少女形の子狐の霊・糊糊ちゃんがいじらしいですね。なかなか痛快な物語です。

「夢の女」
神降ろしで知り合った幽霊の女性と書生は、詩文を交換する友情を育むのですが、男女の仲にはなれない運命のようです。2人は、若くして夫と死別した女の霊の想いを叶えようと協力するのですが・・。なかなか切ない物語です。

「犬と観音」
吾輩は猫である』のパロディですが、似ているのは冒頭とラストだけ。前世は汚職官僚だったとの記憶をとどめている犬が、悪疫に襲われようとしている人間たちを助けようと、仙人の手助けをするのですが・・。なかなか悲しいエンディングです。

「小琴の火鍋」
料理人として仕込んでもらった料亭が店をたたんだ際に、料理研究家の元に就職した少女の物語。素直な娘の作るおいしい料理に周囲がほだされていきます。中華料理に造詣が深い著者らしい作品です。

他には、画中の佳人や中国版コックリさんが登場する「唐山奇談」と、仙女となっていた楊貴妃と出会った男の「仙女と温泉に入りそこねる話」が収録されています。

2015/9