りぼんの読書ノート

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精霊の木(上橋菜穂子)

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守り人シリーズ」の著者のデビュー作です。文化人類学者でありながら良質なファンタジー小説を生み出し続けている著者ですが、学生時代に書いたこの作品がもっと早く世に出ていたなら、初めから作家の道を歩んでいたかもしれないとのこと。しかし文化人類学者としての経験を積んだことが、作家としての深みや凄みを生じさせたことを思うと、何が良かったのかなんて一概には言えませんね。 

 

前置きが長くなりました。本書の舞台は、環境破壊で地球が滅亡した後に人類が移住した辺境のナイラ星。先住異星人であったロシュナールは自然と滅んだとされています。しかし少女リシアに目覚めた不思議な超能力は何を意味しているのでしょう。リシアは、従弟のシンとともに「失われた精霊の木」を探す旅に出るのですが・・。 

 

さすがに本書はかなりの「若書き」ですが、それでも「著者らしさの核」は既に存在しています。本書のテーマは「征服者が隠蔽捏造した過去を、若い世代が解明する物語」なのですから。ロシュナールのモデルは著者の専門分野であるアボリジニなのではないかと思いながら読みましたが、それほど単純ではなさそうです。さまざまな先住民族の神話や歴史を取り入れながら、著者が独自に想像したなの世界ですね。 

 

2019/12