りぼんの読書ノート

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戦場のコックたち(深緑野分)

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著者のデビュー作である『オーブランの少女』が面白かったので、直木賞本屋大賞の候補になった本書を手に取ってみました。 

 

本書の舞台は第二次大戦末期の欧州。合衆国陸軍空挺隊のコック兵となった19歳のティムが、ノルマンジー上陸からベルリン解放まで戦場を進んでいく中で、さまざまな体験をする物語。コック兵であっても、立派な戦闘要員であり、悲惨な戦闘に巻き込まれていきます。かけがえのない仲間を何人も失いながらも、生き抜くためには食事という基本的な行為が止むことはありません。まだ若い主人公は、おのずと生と死を見つめるようになっていくのです。 

 

しかし本書はミステリなのです。不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、一晩で忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、米軍に解放された直後に自殺したオランダ人夫婦、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体、そして中隊に転属してきた負傷兵の正体。登場人物が多くてひとりひとりの個性を丁寧に描き切れていない感はありますが、連作形式で描かれた「戦いと調理と謎解きの日々」は新鮮でした。 

 

2019/12