りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

スカイラー通り19番地(E・L・カニグズバーグ)

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クローディアの秘密の主人公は1960年代の少女でしたが、本書のマーガレットは1980年代の少女でしょうか。物語に出てくる、分割された巨大通信会社のモデルはATTでしょうから。

でも、20年の時を経ていても、思春期にさしかかった少女が抱く想いは一緒です。それは、秘密だらけの大人の世界に、早く仲間入りをしたいという気持ち。大人の世界のどんな部分に興味を抱くのか、どんな部分を拒絶したいと思うのかは人それぞれで、それが個性になっていく。不安一杯のそんな時に、行動を理解して、手を差し伸べてくれる大人の存在は大きいですね。

両親が海外に出かけた12歳の夏休み、マーガレットはサマーキャンプに参加します。規則に縛られた上に、同室の少女たちからいじめを受けて孤立してしまいますが、「自分勝手で手に負えない問題児」というレッテルを貼られた彼女を救い出してくれたのは大好きな大叔父さんの兄弟でした。

昔かたぎの職人で、何が大切かについてはブレない感覚を持っている大叔父さんたちは、マーガレットの味方ですけど、彼らも大きな問題を抱えていました。それは、庭の片隅に大切だったものばかりを集めて長年かけて作り上げてきた3本の塔が、街の再開発のため取り壊しの命令を受けてしまったこと。塔が大好きだったマーガレットは、塔を守るための戦いを始めるのですが・・。この塔にはモデルがあるようですね。マーガレットのように、塔を守るために立ち上がった少女も実在していたのでしょうか。

フォークアートや市民運動だけでは塔を守りきれず、巨大資本と弁護士まで登場せざるを得なかったのはアメリカの現実なのでしょう。マーガレットの一途な思いが大人の世界を動かすに至るわけですから、それはそれでドラマチックな展開なのですが。

2008/1