りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007/12 また会う日まで(ジョン・アーヴィング)

年間ベストをアップした後に12月のベストを書くのも間が抜けていますが、12月の1位争いがそのまま年間ベストを争うという、稀に見る激戦でした。1位とした『また会う日まで』と、2位とした『ガラスの宮殿』は僅差です。

SFの名作『エンダーのゲーム』の続編や姉妹編も楽しく読ませてもらいましたし、大江さんの健在ぶりも見せていただきました。^^

1.また会う日まで (ジョン・アーヴィング)
オルガニストの父に捨てられた刺青師の母により女の園で育てられたジャックが、女性たちとの遍歴を経て、父親探しの旅をはじめます。それは同時に、自分自身を発見する過程でもありました。それぞれが「読ませる」物語ともなっている、丁寧に書き込まれたエピソードが、感動の最終章に向かって見事に収斂していきます。まさに長編小説の醍醐味!

2.ガラスの宮殿 (アミダヴ・ゴーシュ)
インド、ビルマ、マレーを舞台にして、イギリスによる支配や日本軍の侵攻などの大きな歴史のうねりに翻弄されながらもたくましく生き抜いた、三家族・三世代の、百年に渡る物語。ビルマ王朝崩壊の日の、ビルマ人侍女とインド系孤児の出会いにはじまる魅力的な物語群は、現代に続いている矛盾とともに、活力ある人々の系譜も伝えてくれます。

3.天下御免1~3 (早坂暁)
35年前に驚異的な人気を誇ったという、傑作時代劇のシナリオです。「早く生まれすぎてしまった男」平賀源内が、仲間たちとともに「自由人」として窮屈な徳川時代に挑む、痛快無比の物語。演出もテーマも、当時としては斬新。気球に乗っての日本脱出という最終回のほうを、史実として信じたくなりました。これ、リアルタイムで見たら面白かったろうな。

4.有頂天家族 (森見登美彦)
森見さんの新作の主人公は、なんとタヌキの家族です。もちろん舞台は京都。偽・腐れ大学生や、偽・宝塚風男装の麗人が闊歩し、偽・電気ブランは飲まれ、偽・叡山電車まで走り出す! タヌキと天狗と人間たちが入り混じって繰り広げる、なんとも愉快なドラマの最後に待っているのは、思いがけずもホロリときちゃう大感動! 「面白きことは良きことなり!」で、森見さん、絶好調です。^^

5.悪人 (吉田修一)
殺人にまで至ってしまった「普通の」人間関係と、加害者の意外な逃避行。「悪人」とされた加害者や、被害者の肉親たちの人生も描かれていく中で、彼らの「普通さ」とは対照的に、無責任で他人の痛みを平気で踏みにじる、裕福な大学生の「普通さ」に潜む非人間的なものが現れてきます。この本のテーマは、意外にも、「純愛」だったように思えます。





2008/1/2