りぼんの読書ノート

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シャーロック・ホームズと賢者の石(五十嵐貴久)

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世界一有名な探偵シャーロック・ホームズのパロディやパスティーシュは、オリジナルの物語の数よりも、はるかに多いそうです。オマージュ小説の名手である五十嵐さんも、本書の4編のパスティーシュでホームズワールドに参戦してくれました。^^

「彼が死んだ理由─ライヘンバッハの真実」
ホームズは一度、悪の天才・モリアーティ博士と相打ちになって滝の中に姿を消しています。読者からの強い要望で、数年後にまた復活を果たすのですが。この作品は、「ホームズの充実な伝記作家」であったはずのワトソン医師が、ホームズに内緒で「ホームズの死」を書いてしまったとの物語。もちろんワトソン君はホームズの推理から逃れられませんし、ホームズを怒らせると怖いのです。^^;

「最強の男─バリツの真実」
ホームズがライヘンバッハの滝でモリアーティと組討ちになっても勝てたのは、以前、格闘技を学んだことがあったからなのです。そのきっかけになったのは、ある事件でブラジルの少年にコテンパンに敗れてしまったからなのでした。彼こそ、いずれ子孫に日本の柔術を破って欲しいと願っている、グレイシー少年だったのです。^^

「賢者の石─引退の真実」
引退後、ニューヨークで静養するホームズのもとを尋ねてきたジョーンズ教授。どうやら、彼が発掘した「賢者の石」を狙うドイツ軍に、息子(ジュニア)を誘拐されてしまったようです。でも、生まれつき冒険好きの10歳の息子は、簡単にドイツ軍につかまったままではいません。事件解決のついでにジュニアが助けた犬は、ホームズから「インディアナ」と名づけられます。誰のことかは、もう、おわかりですよね。^^

「英国公使館の謎─半年間の空白の真実」
なんとホームズは、日本にも登場していたのです。ターゲットはなんと、同時代のロンドンを恐怖におののかせた、切り裂きジャック! 切り裂きジャックの正体が闇に葬られた理由は、日英同盟だった? 事件を見届けた、公使館勤務の日本人職員の息子は、後に岡本綺堂と名乗ります。

ホームズを他の有名人と競演させてしまったパスティーシュとしては、ルブランのルパン対ホームズが有名ですが、本書も楽しかったですよ。

2007/10