りぼんの読書ノート

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シャーロック・ホームズ最後の解決(マイケル・シェイボン)

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第二次大戦末期、イギリスの片田舎サウス・ダウンズに住む養蜂家の老人の名前は最後まで明かされませんが、もちろん晩年のホームズです。89歳となって身体も衰え、記憶が失われることを恐れている老人は、ドイツから亡命してきたユダヤ人少年とオウムを巡る事件に巻き込まれます。

オウムがドイツ語で連呼する謎の数列は、何を意味するのでしょう。実は少年の父親は、ナチス親衛隊帳を治療するためにドイツに留まらされていた精神科医だったのです。オウムを盗み出そうとして、イギリス海軍諜報部や、ナチスのスパイや、難民救援委員会が動き出し、ついに殺人事件が・・。

オウムが覚えていた数列は、毎朝ベルリンから東へと向かっていた列車番号であり、ドイツ暗号解読の鍵でも、スイス銀行の秘密口座番号でもなかったのですが、それは最後まで誰にもわからなかったようです。ホームズの推理も真犯人までに留まってしまいました。

本書の原題「The Final Solution」は、もちろん、ホームズがモリアーティ教授とともにライヘンバッハの滝壺に落ちる、正典の「The Final Problem」に対応していますが、それだけではありません。ナチスによるユダヤ人問題の「最終的解決」ともかかっているのです。歴史改変SFの傑作ユダヤ警官同盟の著者らしいパスティーシュでした。

2015/2