りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ヒストリー・オブ・ラブ(ニコール・クラウス)

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荒削りではあっても、心に強く訴えかける小説というものがあります。ブロ友である葉桜さんのレビューで知った本書も、そんな一冊でした。

ナチスから逃れてポーランドを離れ、ニューヨークで錠前屋として細々と生計を立ててきた独り暮らしの80歳の老人、レオ・グルスキ。そんな彼が、60年前にたった一冊書いた「愛の歴史」という小説は、ついに日の目を見ることはなかったはず。亡くなった父が好きだった、ほとんど誰も知らない「愛の歴史」という小説に登場する女性の名前から名づけられた、14歳の少女アルマ。彼女は、小説のアルマが実在すると信じて捜索を開始するのですが・・。

こんな2人が、奇跡の出会いを果たす物語です。なんといってもレオの人生が素晴らしい。戦争を奇跡的に生き延びたレオは、アルマが逃れていたニューヨークに渡ります。しかし、連絡も絶えていたレオの生存をあきらめていたアルマは、幼い子供を抱えて途方にくれる中で既に結婚していました。そこでレオは「今までの人生で一番難しいこと」をしたのです。アルマに「背中を向けて立ち去る」ということを。そしてその後60年近く、アルマと彼女の息子を見守り続けるのです。

一方でレオの書いた本も、数奇な運命をたどっていました。「愛の歴史」の著者とされる、ツヴィ・リトヴィノフという南米の人物は、いったい何者で、どんな人生をおくり、どうして本が出版されたのか・・。

数多くの本のなかである本とめぐり合うのは、どんな確率なのでしょう。まず自分からは手に取ることのない、こんなタイトルの本と出合ったことも、ブログが起こしたちょっとした奇跡です。

2007/10