りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

予定日はジミー・ペイジ(角田光代)

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思いがけなく妊娠してしまい、1月9日(ジミー・ペイジの誕生日)が予定日と告げられた女性の、マタニティ日記。後書きを読むまで、これは実体験を題材にした小説で、角田さんもついに母親になったのか・・と思っていたのに、全くのフィクションなんですね。はじめに、最後の数章(誕生部分)を短編として発表したところ、お祝いをいただいたというから、そそっかしい人って他にもいるんだな。

でも、そう思われても仕方ないほど、リアルに角田さんらしい小説でした。「おめでたですよ」と医者から告げられても、全然そんな気になれない。プレママスクールで出産の喜びを感じようと言われても、シラケちゃう。手放しで喜ぶ夫に本音を話したら、「堕ろさないでくれ」と泣かれちゃう。夫の協力に感謝の涙を流したかと思うと、夫の一言に神経を逆なでされてトイレに籠城したりもしちゃう。

妊娠中の不安や、妄想や、亡き父との確執や、昔の恋人との再会など、ネガティブな感情や、禁断の心情さえも、ぎっしり詰まってるあたりが、いかにも角田さんっぽく(どんな印象持ってる?!)、とてもリアルに感じられてしまったのです。

そんな「だめ妊婦」でも、居酒屋で「動いたっ!」と大声を出した時に見知らぬ客たちから拍手されたり、ネットで知り合った、やはり出産に不安を感じている妊婦仲間と励ましあったりしながら、だんだんお腹が大きくなってくると、まだ見ぬ赤ちゃんを愛しく思えてきたりもして、ついに予定日を迎えることになりました。母親になるってことは、決して奇麗事ではなさそうです。出産を経験された女性の方から本書の感想を聞いてみたいものです。

2007/10