りぼんの読書ノート

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永遠の出口(森絵都)

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「小さい頃、私は『永遠』という言葉にめっぽう弱い子供だった」とはじまる本書は、普通の少女である紀子の、10歳から18歳までの成長をたどる物語。

普通の少女ですから、普通のことが起こるのです。同級生とケンカをしたり仲直りをしたり、恐ろしい担任の先生と対決したり、万引きをしてぐれかかったり、イジメを恐れたり、バイトしたり、恋をしたり、失恋したり、両親が不和になってしまったり、進路に悩んだりするのです。

普通のことが普通に書かれているこういう本は、自分の思い出とシンクロするかどうかが、ポイントですね。主人公のキャラをはっきりと打ち出していないのは、多くの人に共感してもらえるように、「あえて」なのでしょうか。ちょっと癪だけど、それは成功しているようです。自分だって、今から思うとどうでもいいようなことで、悩んだり、喜んだり、一生懸命になったりしながら、成長してきたのですから。

ただ、エピローグは、ちょっと書きすぎたようです。大人になってからの彼女の恋愛と結婚の話は、すでに「一般的」ではないように思えますから。『永遠』という言葉よりも、『目の前の現実』を重要と思えるようになってきた「思春期の出口」が見えてきた所で、物語を終えたほうが良かったような気がするのですが・・。

2007/10