りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ベイカー街の女たちと幽霊少年団(ミシェル・バークビイ)

f:id:wakiabc:20210830132035j:plain

シャーロック・ホームズを下宿させていたハドスン夫人とワトスンの妻であるメアリーがタッグを組んで、19世紀ロンドンの女性たちを苦しめる闇に立ち向かう本格ミステリシリーズの第2作です。前作の『ベイカー街の女たち』と同様に、コナン・ドイル財団によって「ホームズ・シリーズ」へのパスティーシュとして公式に認定されています。

 

ホームズが『バスカヴィル家の犬』の事件を解決してベイカー街に戻ってきたころ、ハドスン夫人は腹部の閉塞症を患って、医師のワトソンの手配で病院に入院していました。彼女はそこで不思議な事件に遭遇します。深夜に死神のような黒い影に覆い被せられた患者が、翌朝に死亡していたのです。これは意識朦朧としていたワトスン夫人が見た幻影にすぎないのでしょうか。その一方で、ワトスン夫人に協力している少年探偵団ことイレギュラーズは、数年前から少年たちが姿を消しているという事実を掴んでいました。そして亡霊のような少年グループがロンドンに出没しているという噂話も。これらの事件は互いに関係しあっているのでしょうか。

 

前作において19世紀イギリスで社会的に低い立場に置かれていた女性たちの敵を登場させた著者は、本書では児童労働の問題を取り上げています。突然いなくなっても誰も悲しまない境遇の孤児たちや、ネグレクトされた子供たちの敵とは、おのような人物なのでしょう。しかも前作と同様に、本書の犯人の背後には「例のあの人」もいるようなのです。

 

女性同士の対決や、少年団同士の闘争など、華々しい見どころも多い作品です。本筋とは直接関係しませんが、ホームズが切り裂きジャックと対決して決着をつけたようなことも仄めかされています。そのうち映画化もされるのではないかと期待しているのですが、いかがでしょう。

 

2021/9