りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

この人と結婚するかも(中島たい子)

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ゼーバルトを2冊続けた後は、30代女性の等身大感覚に戻りましょう。出会いの度に「この人と結婚するかもしれない」という予感にときめき、毎回毎回裏切られてきた、ちょっとイタイ女性の節ちゃんが主人公。

美大の学食で話しかけてきた、感じのいい男性。勤務先の美術館に取材に来て、会話が盛り上がった男性。スーパーで、ナチュラルチーズに同時に手を伸ばした男性。彼女のほのかな期待は、常に裏切られるのですが、それも当然。彼女は、期待に裏切られることが怖くて足を踏み出せないのです。

友人たちは、そんな彼女に手厳しい。恋人がいるようだって、奪えばいいじゃない。子供がいるといっても、父子家庭かもしれないじゃない。どうして毎日そのスーパーに通って、出会いを作らないの?

そういえば、節ちゃんは外食も苦手でした。それは、メニュー写真と実物との落差にがっかりするのが嫌だから。男性にも、過剰な期待を抱いたら、きっとがっかりさせられる。そんな節ちゃんが、英会話教室でケンちゃんと知り合います。今度こそ「この人と結婚するかも」なんて思わないようにしようと、できるだけ冷めた眼で見ていたら、案の定、欠点だって見えてくる。

でも、彼女はようやく一歩を踏み出しました。「イメージの中で一喜一憂するのはやめて、ありのまま向き合ってみよう」。節ちゃんが、ケンちゃんと、うまくいくかどうかはわかりません。でも、ようやく何かは始まりそうです。そういえば、外食もせず、まずそうな健康食品ばかり食べている頃の節ちゃんは、全然魅力的じゃなかったんですから。

2007/10