りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オールド・エース(アニー・プルー)

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シッピングニュース』で、北の果てニューファンドランドの厳しい自然の中で生きる人々を描いた作者ですが、本書の舞台は、一転してオクラホマのパンハンドル地帯。そこは、かつては「No Man's Land」と呼ばれたこともあり、周辺のどの州からもリクエストされないまま、結局オクラホマ編入されたという、砂嵐や竜巻が吹き荒れる地帯。地下の帯水層から水を汲み上げることが可能となって穀倉地帯となったものの、最近では水資源の枯渇や汚染が問題になっている地帯です。

主人公のボブは養豚会社の雇われ社員。養豚場の建設用地を買収するために現地に飛ぶよう指示を受けます。さっそく現地で下宿を探し、現地の人々と交流を深めるボブの耳に入ってきたのは、西部開拓史の1ページともいえる、この地域の開拓のために苦労を重ねた歴代の人々の物語でした。

バッファローによって保たれていた緑の草原が、牧畜牛を飼い始めたことで荒れ始めること。有刺鉄線が導入された為に大地が区切られてしまうようになったこと。水を汲み上げる手段が風車から揚水機に転換されたこと。さらに地域に一時的に大金をもたらした石油の発見。

そして現代。ある程度の蓄えはあるものの、若者は都会に出て行き、高齢化と過疎に悩み、水資源の枯渇に怯える老人たちの中には、土地を手放す人も出てくるのです。ボブもようやく、土地を買収できそうになるのですが、それは果たしてこの地域にとっていいことなのでしょうか。もと風車職人だった「エース爺さんの奥の手」は、少々夢物語のような気もするけれど、ひとつの方向性を示しているかのようです。

個人名や家族名が連なる、地域の「歴史」は、読み物としてはゴツゴツしてわかりにくい感じもあるのですが、まるで現実の人々の物語が描かれたかのような圧倒的な存在感を持って読者に迫ってきます。もっと読んでみたい作者です。

2007/10