りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

カジノを罠にかけろ(ジェイムズ・スウェイン)

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映画では「オーシャンズ」シリーズが華々しくカジノ荒らしを仕掛けていますが、この本はカジノ側に立って「イカサマ・ハンター」として雇われる男の物語。長年勤めたラスベガス署の刑事を定年退職し、今はカジノのコンサルタントとしてマイアミで優雅な老後を過ごしている老練のトニー。彼のもとに舞い込んだ依頼は、ブラックジャックで勝ち続ける謎の男への対策。

妻に先立たれてから折り合いを悪くしている息子がマイアミに来るというので、サッサとラスベガスに飛んでしまったトニーが見たのは、死んだはずのイカサマ師と同じ手口で勝ち続ける謎の男。その男の存在自体も謎だけれど、もっと謎なのは、彼の真の狙い。そもそも、男にカモにされた薄幸の美人ディーラーは、グルなのかどうなのか。他には、共犯者はいるのかいないのか。

おそらく大半の読者は、薄幸の美人ディーラーのノーラに同情するのでしょう。アメリカンドリームを夢見てラスベガスに出てきたものの、一介のディーラーから抜け出すことができないまま30歳を超え、蓄えもほかの特技もないのに、「疑わしい」というだけでカジノから解雇されてしまう。

しかしノーラから事情聴衆するたびに、現役刑事だって、浮気性のカジノのオーナーだって、彼女に同情的になってしまう中で、トニーだけは「彼女は黒」と言い張るのです。トニーの勘は当たっているのでしょうか? そして謎の男の正体と真の狙いは何なのでしょうか?

楽しく読める、ミステリー仕立てのクライム・ノヴェルでした。息子や隣人たちとの関係に悩むトニーも、女にだらしないけれど憎めないキャラの小さなカジノのオーナーをはじめ、脇役たちがみんな、人間臭いのです。ちなみに私は、ラスベガスに行った時に、ブラックジャックで100ドル稼いだ経験があります(笑)。

2007/8 Ravennaにて