りぼんの読書ノート

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七姫幻想(森谷明子)

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千年の黙で『源氏物語』の失われた一帖の謎を紫式部自身に探求させた著者が、織姫伝説に秘められた物語を紡ぎ出しました。遙か昔から水辺に住み、不思議な力を持ち、機を織る美しい女たち。彼女らの秘められた逢瀬は、古代からの禁忌に触れる悲しい運命。

大王(おそらく允恭天皇)の寵愛を后と競った、衣通姫の悲しい愛。大王の第一皇子である、兄の軽皇子を幼い頃から慕い、兄を陰謀から救うべく近親相姦の汚名を着た、軽大娘皇女(かるのおおいらつめ)。

時代は平安に下り、和歌だけがとりえの冴えない中年男、清原元輔の優しさに応える女性たちも、隠れ里に住む衣通姫の子孫のようです。さらに、平安中期、巫女として賀茂神社に捧げられた朝顔斎王は、源の姓を持つ少年と恋をします。(老いた清少納言も脇役で登場)

隠れ里からは、時として野心を持った女性も現れます。天皇の寵愛を得ておきながら皇太子とも通じてしまった瑞葉は、自らの野心のために身を滅ぼしてしまうのですが、彼女を慕っていた少年は、やがて隠れ里の秘儀を生み出す伝説になっていきます。

最後の一話は、ついに江戸時代になってしまいます。機織りは、貧乏武家の奥方の内職になってしまっているのですが、この時代でも、また同じ悲劇が繰り返されてしまうのです。

7つの章がそれぞれしっとりと和歌で締めくくられているのは、情感たっぷりでいいですね。やっぱり、この人の現代ものは読みたくないと思えてしまうのですが、どうでしょう?

    君が往き 日長くなりぬ
    山たづの 迎へを行かむ
    待つには待たじ

2007/7