りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

神話のなかのヒメたち(産経新聞取材班)

イメージ 1

神話時代から初期日本国家の誕生までを描いた古事記には、多くのヒメたちが登場します。それぞれの時代に応じて、天津神(アマツカミ)、地津神(クニツカミ)、海津神(ワタツミノカミ)、皇妃として登場するヒメたちを主役に据えた神話・伝承を、ヒメたちを祀る神社の紹介とともに綴った作品です。各章から印象に残ったヒメたちを紹介しておきましょう。

第1章 須佐之男
・なんといっても姉アマテラスの存在が大きいですね。完全なシスコン男性としかいいようがありません。
・そんなスサノオヤマタノオロチをを討つ英雄に変えたのは、献身的なクシナダヒメの存在です。

第2章 大国主命
・各地を統合した地神であるオオクニヌシ神話にはヒメが多数登場するのですが、彼を英雄に変えたのは、義父スサノオとの間を取り持った正妻スセリヒメですね。しかし彼女は嫉妬深かったようです。
・「因幡の白兎」に登場する誇り高いヤカミヒメが里帰りしたのは、正妻との軋轢に耐えかねたからでしょうか。
・しかしそんなオオクニヌシの最愛の女性が宗像三女神の長女タキリビメであったとの指摘は、出雲と北九州の結びつきの強さを示しているようです。

第3章 日向三代の妻と母
・ニニギの妻となった美しいコノハナノサクヤヒメですが、夫に貞操を疑われた際には激情に駆られて火炎の中で出産する荒業を演じます。
・しかし醜さゆえにニニギに嫁入りを断られた、姉のイワナガヒメの物語のほうがドラマ性を感じますね。
・夫ヤマサチに産屋を覗かれて羞恥のあまり海に帰ったトヨタマヒメの物語の真相は、気の毒な事件だったように思えます。

第4章 初代神武天皇
神武天皇の妻は母のトヨヤマヒメの妹であるタマヨリヒメでした。初期皇室と海上勢力との結びつきの深さを感じます。
・東征を助けた伊勢のイスズヒメは、地元豪族の娘だったのでしょう。神武天皇の女性遍歴は政略結婚ばかりだったのでしょうか。

第5章 十一代垂仁天皇
・皇后のサホヒメは、謀反を起こした兄サホヒコと運命をともにしています。夫としてはやりきれないところですね。

第6章 倭建命
・日本各地へ征討に出た英雄だけに、各地にヒメ伝説がありますが、一番有名なのは走水の荒海に身を投じたオトタチバナヒメですね。
ヤマトタケルに草薙の剣を送った叔母のヤマトヒメのことも忘れてはいけません。

第7章 十四代仲哀天皇
・本人よりも妻の神宮皇后のほうが有名です。三韓征伐のみならず、住吉三神を祀ったことでも知られています。

第8章 十六代仁徳天皇
・世界中で正妻は嫉妬深いようですが、イハノヒメも例外ではありません。美しいクロヒメも犠牲者ですね。
・でも仁徳天皇も自身の嫉妬からメドリノミコを謀反へと追いやってしまいます。

第9章 十九代允恭天皇
・嫉妬話はまだまだ続きます。命がけで夫に尽くしたオシサカノオオカカツヒメは、妹のオトヒメに嫉妬するんですね。
・皇太子だったカルノミコは、同母妹カルノオオイラツメと禁断の恋に落ちて失脚しています。オトヒメもカルノオオイラツメも「衣通姫」と呼ばれているので、紛らわしいですね。

第10章 二十一代雄略天皇
・結婚の約束を80年間待ち続けたアカイコとは、純情な美魔女だったのでしょうか。

他に「伊耶那美命」天照大御神の2章がありますが、こちらは主役級ですので、あえてここで述べておく必要もないでしょう。多くのヒメたちに共通しているのは、強い女性であったこと。ヒメたちの強さなくしては、日本の歴史も存在しなかったのですね。

2019/4