本能寺にあった「抜け穴」の秘密や、信長の遺体の行方といった謎は、すでに第1作で解明されています。第2作ではこれに加えて、秀吉と秀頼の父子関係に潜む謎が持ち出されましたが、少々消化不良でした。では、この第3作では何を持ち出すか・・と思ったら、まさかの「純愛」!
主人公の明智左馬助は、明智光秀の娘婿として腹心でもあった武将。彼が恋した相手は光秀の長女(細川ガラシャの姉ですね)。信長の命令で荒木村重の息子と政略結婚させられたものの、村重の反乱の時に離縁されて左馬助と再婚した女性。
でも、どうして「純愛」なのでしょう。この2人は実は幼馴染であって、一時は信長に引き裂かれながらも、ついには結ばれて純愛を貫いたというのは、ちょっといい話。でも、それだけでこのシリーズのテーマになりえるわけでもない。
「信長公記」の作者太田牛一にはじまって、三者三様の観点から信長を描いた三部作でしたが、これだけ異なった見方ができるというのも、信長という人物の圧倒的な迫力のせいなのでしょう。佐藤賢一さんの『女信長』も最近の傑作でした。
ともあれ、シリーズの最後に「純愛」を持ってきた加藤さん。70歳をすぎて文壇デビューしたとは思えない若々しさです。^^
2007/6