黄金時代の終焉期では、新大陸からの富はスペインを潤すこともなく、右から左へと諸外国の商人たちに流れていってしまったようですが、膨大な黄金が密輸されるとあっては、見過ごすわけには行きません。国王からと思える極秘依頼を受けて、荒くれ男どもを集めて密輸船の強奪に乗り出したアラトリステでしたが、彼を待ち受けていたのは恐ろしい罠でした・・。
アラトリステが実の息子のように育てている、亡き友人の息子・イニゴは17歳の美青年となり、戦いにも、恋にも、一段と成長した姿を見せてくれます。表紙にも初登場。むさい荒くれ男どもが勢ぞろいする中で、唯一爽やかな存在かな。後年、軍の近衛隊長にまで出世したイニゴが、往時を思い出しながらこの手記を書いているという設定なのですが、黄昏の時代を生きたスペインの剣士は、国力上昇期のフランスで正義の勝利を疑うことのなかった「三銃士」とは異なり、苦渋に溢れた口調なのです。
さわやかダルタニアンとの一番の違いは、イニゴの恋でしょうか。イニゴが生涯をかけて一途に恋したアンヘリカは、国王の寵臣の娘で当時まだ15歳ながら、稀代の悪女ぶりを発揮する絶世の美少女。第2巻でも、彼女に陥れられて異端審問官に囚われたというのに、今度は彼女の陰謀で生命の危険にさらされてしまうんですよ。ファーストキスこそ、経験できたんですけどね。^^
2007/6