りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

岡山女(岩井志麻子)

イメージ 1

『ぼっけえきょうてえ』の続編とも言える、岡山ホラー。ホラーは嫌いなんだけど、つい読んでしまいました。エッセイかと思って借りてしまったのです。

破産して錯乱した旦那に日本刀で切りつけられ、美貌と左目を失った元メカケのタミエは、代わりに霊感を手に入れます。明治期の岡山を舞台に、彼岸と此岸を行き来するタミエのもとに、怪しい客たちが持ち込む怪しい依頼をテーマにした連作短編。

タイトルが奮っています。「岡山バチルス、岡山清涼珈琲液、岡山美人絵端書、岡山ステン所、岡山ハイカラ勧商場、岡山ハレー彗星奇譚」。ステン所はステーション(駅)で、勧商場はデパート。本当ならみんな、文明開化を象徴する光の部分。文明開化の影に広がっている底知れない貧しさとともに、明治の世にも、まだまだ怪しいものが蠢いていたのでしょう。

『ぼっけえきょうてえ』を読んだときは、トイレに行けなくなりましたが、これは、それほどではありませんでした。一番怖いのは生きてる人間で、亡霊たちは単にとりつくだけ。とりつかれる人には、それなりの理由があるのです。

2005/2