りぼんの読書ノート

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百年の誤読(豊崎由美、岡野宏文)

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タイトルはもちろん『百年の孤独(ガルシア=マルケス)』のパロディ。「ベストセラーが何故ヘナチョコなのか」を解き明かそうと、バリバリの書評家2人が100年間のベストセラー100冊を滅多切り。

名作へのツッコミぶりは読んでいて楽しく爆笑もの。「偉そうな警句を挟まずにはいられない」蘆花には「お茶目さん^^」。「女性ファンは美人のほうがいい」とのたまう花袋には「正直すぎ!」。「原因は知れた」で筆を止めてしまう直哉には「読者をおきざりにするな~」。「一言会話で11行も稼ぐ」紅葉には「セコすぎ」。「『石炭は焚かうね』と智恵子に催促する」光太郎には「てめえで焚けっ!」。

極めつけは、実篤の『友情』です。主人公・野島が「神は自分にこの女を与えようとした」とストーカーぶりを正当化するのに対し、「オイオイ、本当に神の声聞いたのかよ。聞いたら聞いたで、脳の状態ヤバイことになってるぞ!」。

でも、読んでいて不快じゃありませんよ。それらの作品を深く読み込み、愛していることがわかるから。私たちのようなアマチュアが、こういう読み方してはいけませんけどね。そりゃあ、露骨な男尊女卑とかにはツッコミ入れたくなりますが、キャラの人格や教養程度には目をつぶって、ストーリーを楽しむべきでしょう。

2人が出した結論は「1960年を境にして、ベストセラーが薄っぺらくなっていく」。確かに、それ以降のベストセラーの多くは、もはや小説ですらありません。「おれについてこい」、「頭の体操」、「ノストラダムスの大予言」、「かもめのジョナサン」、「気くばりのすすめ」、「愛される理由」、「脳内革命」、「だからあなたも生き抜いて」、「金持ち父さん貧乏父さん」、「盲導犬クウィールの一生」、「Deep Love」・・・だもんなぁ。これじゃ、ツッコミようもないよ。でも、これは作家の問題じゃなくって読み手の問題。ベストセラーは読者が作るものなのですから。

辛口の彼らが絶賛する「最近のべストセラー作家」だっていますよ。W村上、さくらももこ吉本ばなな・・。みんなヒューマンな作家ですね。

彼らは「何故1960年が転換点なのか」については触れていません。でもTVのせいですね、きっと。最近ではゲームやネットも影響してるかな。私は何にも心配していません。ベストセラーになっていなくても、面白い本はたくさん出続けていますから。

2005/2