りぼんの読書ノート

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世界の歴史5「東アジアと中世ヨーロッパ」(J.M.ロバーツ)

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15~16世紀の大航海時代が「世界」を結ぶようになる前夜。前巻ではローマ滅亡後のビザンチンと中近東の歴史が綴られましたが、本巻ではアジアとヨーロッパに焦点があてられます。

まずは、始皇帝から清までの中国の歴史を一気にたどってしまいます。始皇帝による中国統一、漢時代の中華圏の広がり、隋による科挙の採用を経て、中国文化のベースは唐代にほぼ完成されていたとの見解を示した上で、異民族の支配者をも同化してきた「中華文明」の強靭さを強調。しかしながら古代を聖なるものとした儒教思想が経済発展を阻害し、また支配階級と国民の大多数である農民階級との「断絶」によって「国民国家」へと転換できないままに西洋文明と遭遇したことが、「中華思想」の脆さとなって現れてしまうことになります。

日本には、中国の40%にあたる多くのページが割かれています。大陸文化から多くを吸収しながら一度も他民族支配を受けることなく、政権交代期の内乱を別とすれば相対的には長い平和な時代の中で、商業資本の蓄積と、高い教育水準を実現していたとされます。さらにマウリヤ朝からムガール帝国に至るインド亜大陸の歴史と、アステカやインカなどの「新大陸」文明についても説明されますが、「世界歴史への貢献の少なさ」から相当省略されてしまっているのは残念。

1000年以降のヨーロッパでは、聖職者の叙任権闘争に端を発する教皇派(ゲルフ)と皇帝派(ギベリン)の争いが、イタリア、ドイツの統一を妨げてしまっていました。14~15世紀にかけて、フランスとイギリスは百年戦争を戦いますが、発端は君主権の争いとはいえ、これが両国をいち早く「国民国家」へと転換させて次の時代の主役となる準備期間となったようです。経済的・文化的には、ベネチアジェノバなどの海洋商業国家の発展や、フッガー家メディチ家などの大商人による商業資本の蓄積がルネッサンスを生み出すに至ります。

いよいよ次巻では大航海時代が始まり、この後は「世界の歴史」はひとつの大きな流れの中で結びついていくことになります。

ヨーロッパの中世史やアジア史は、一番わかりにくい部分。世界史を学んだ時も、中世はほとんど空白のままで通り過ぎてしまい、後から受験のために学び直して、ようやく古代と近世が繋がったという感想を抱いたことを思い出しました。^^;

2007/3