りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

百億の昼と千億の夜(光瀬龍)

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ハニーさんが萩尾望都さんのことブログで書いていたので、この本のことを思い出して再読してみました。

今読んでも、すごい発想です。「滅びの因子」を組み込まれた生命体の反乱というテーマや、仏教的世界観に基づく世界の終末描写に漂う虚無感は、今でも、読むに耐えますね。映画「MATRIX」の先を行く発想すら見えています。

歴史上の人物に与えた役割も意表をついて、見事です。アトランティスについての記述を残したプラトンに古代世界の破滅の真相を幻視させるなんてのは、ほんの序の口。仏陀となる前のシッダールタを魔神とされる阿修羅王と出会わせ、帝釈天との果てしない戦いや、56億7千万年後にもたらされるといわれる弥勒の正体を垣間見せる。阿修羅王のキャラが「可愛い少女風」というのには、今で言う「萌え」を感じた男性読者も多かったのでは?^^

ナザレのイエスの役割が、「滅びの因子」を組み込んだ造物主の忠実な手下にすぎない「管理管」というあたり、本書をはじめて読んだときには、ぶっ飛びました。

でも、読み返すんじゃなかった・・。SFって、ストーリーとガジェットの総合なんですよね。太陽系と地球の創生の描写や、サイボーグと化した主人公たちが未来で、宇宙で、造物主の手先と戦うクライマックス場面の描写は、やはり古めかしく感じてしまったのです。誰か、リライトしてくれないでしょうか。

2007/3