りぼんの読書ノート

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世界受容(ジェフ・ヴァンダミア)

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「3部シリーズの完結編」では前2巻と異なり、複数の視点から語られていきます。

ひとつは、第2巻:監視機構のラストで、「コントロール」とともに「エリアX」に飛び込んでいった「ゴーストバード」の語り。第1巻:全滅領域の語り手であった生物学者のコピーであるゴーストバードは、オリジナルの行方を追い求めますが、彼女たちが出会ったのは意外な人物でした。そして、「エリアX」内での異常な時間経過を告げられることになります。

2つめは、「エリアX」に変容する以前の土地で灯台守をしていた男の語り。後に「塔」の最深部に棲息するクローラーとなる男は、「エリアX」の最初の犠牲者になりました。前局長であった心理学者は、子供のころに灯台守と接点があったのです。

3つめは、監視機構「サザーン・リーチ」に就職して局長となった心理学者の語り。コントロールの母と祖父が「エリアX」の始まりに関わっていたらしいことが明かされます。さらに、オリジナルの心理学者が「エリアX」内で書き遺した手記も明かされます。

全てを変容させていく「エリアX」の正体は、最後まで明らかにはされません。おそらく、ゴーストバードがクローラーから読み取ったイメージが答えなのでしょう。すなわち、遥か彼方で滅びた文明が送り出した、ナノレベルのテラフォーマーのようです。

「エリアX」の出口へと向かうゴーストバードの描写で本書は終わっていますが、もはや彼女にとっては出口など消え去っていても、元の世界がなくなっていても構わないのかもしれません。彼女は全人類に先行して、変わりゆく世界のなかで人類が受け入れるべきものを、理解しているのでしょう。

2015/7