りぼんの読書ノート

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監視機構(ジェフ・ヴァンダミア)

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シリーズ第1作全滅領域に続く2作目は、異様な生態系を有する謎の領域「エリアX」を監視する機構「サザーン・リーチ」が舞台になります。主人公は、前作の「第12次調査隊」が失敗に終わり、局長も行方不明となった機構を立て直すために「中央」から赴任してきた「コントロール」という男性。

「第12次調査隊」からは生物学者、人類学者、測量技師が戻ってきたものの、大きく記憶を欠落させており、単なるコピーにすぎないようです。しかも行方不明のままである心理学者が、「サザーン・リーチ」の局長だったというのです。

しかし、物語は遅々として進みません。「コントロール」は悩める組織人にすぎず、「中央」の上層部で彼を操る母親に反発し、前局長に心酔していた局長補佐の嫌がらせに耐え、「真実」の周辺をオロオロまわっているだけなのです。それでも、「前局長=心理学者」の行動に不審な点があることに気づいていきます。しかし、彼が前局長の正体に気づいたのは、世界の浸食を再開した「エリアX」が「サザーン・リーチ」を飲み込もうとしている時でした。

前作で主人公であった生物学者の本体は、まだ「エリアX」内で生存しているようです。本書に登場する生物学者はコピーにすぎないのですが、それでも彼女の重要な特質を一部引き継いでいるようで、「コントロール」を魅了していきます。やがて監視を逃れて脱走を果たした生物学者と、彼女を追いかけてきた「コントロール」は、思わぬ行動に出るのですが・・。

カフカ的な悪夢世界」ですが、最後のほうになって、前局長、生物学者、「コントロール」の名前が明かされます。シリーズ最終巻は「人間の物語」になっていくのでしょうか。

2015/7