前作『蟻』で、密かに「異種文明コンタクト」を果たすことになった人類と蟻でしたが、人類代表とも言える、生物学者だった故エドモンの甥であるジョナサン一家と救出隊は地下に閉じ込められて蟻たちから栄養補給を受けて生き延びている状態。
一方で、人類の存在を秘密として保っていた前女王蟻は、クーデターによって滅ぼされ、新女王となったシリ・ブー・ニ(蟻の名前が東洋系のようなのが気になりますが・・)は、蟻の「進化運動」を唱え、諸悪の根源と思える人類に対して、十字軍を発進させます。
赤蟻が起こした十字軍が、カブトムシを操って空軍力を備え、仇敵であったシロアリや、相互不干渉を保っていたミツバチらを糾合しながら、ブローニュの森を進撃する様子が本書のアクション的な読ませ所なら、ジョナサンの息子・ニコラが蟻の世界に「神」の概念をもたらしてしまった悪戯の影響は、思想的な読ませ所。
ラストでは、驚くべき展開も待ち受けています。蟻にテレビを見せて、「人類社会への評価」をさせようというのですから。果たして人類は「蟻が判定するテスト」に合格するのでしょうか・・。
2010/8