りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

たのしい木曜日(ジョン・スタインベック)

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キャナリー・ロウの続編です。1930年代の大不況時代から10年後、第二次大戦後の「缶詰横丁」のメンバーには少々変更がありました。戦争で犠牲になった者、町を出て戻らなかった者もいる中で、主役級だった海洋生物研究所の学者先生(通称ドク)と、ドヤ御殿のマックは健在です。

物語はまたも、皆から愛されるドクを巡って展開します。前作では、ドクのためにと開催したパーティで、あわやドクを破産させそうになったマックですが、まだ懲りていません。マックと仲間たちは、浮浪者や社会的弱者にも優しいドクに、感謝の念を表わしたくて仕方ないんですね。

でも、今度はそれに輪をかけた人物も登場します。亡くなった妹から、「缶詰横丁」の売春宿を引き継いだファウナ。彼女は、ドクに彼女をお世話したくなっちゃうのです。

選ばれたのは、なんでも正直に思ったままのことを言ってしまうスージー。はじめはうんざりしていたドクも、彼女の聡明さと正直さに惹かれていくのですが、今度はスージーが「ドクとだけはつきあえない!」と皆の前で宣言してしまう。いったい何が彼女の本心なのか。2人の恋の行方はどうなってしまうのか・・。「合衆国大統領になる」と占われた、ちょっと頭の弱いヘイゼルも活躍。

「社会派」スタインベックが、地元を舞台に、親友のドクター・リケッツをモデルにして肩の力を抜いて描いた小説です。著者も「入ってくるにまかせた物語」と言っていますが、それが何ともいえない味を出しているようです。ますます、モントレーに行きたくなりました。

2009/2