りぼんの読書ノート

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キャナリー・ロウ(ジョン・スタインベック)

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旅行計画前予習の第3弾は、地元の作家スタインベックが地元を描いた小説です。モントレーの漁港にある、缶詰工場が並ぶ通りの通称はキャナリー・ロウ(缶詰横丁)。ここに住む、貧しいけれどちょっと変わった人々が巻き起こす「人間喜劇」。

マックと彼の仲間たちは、中国人の雑貨屋リー・チョンが借金のカタに手に入れた倉庫に住まわせてもらっているのですが、貧困の中で肩を寄せ合って生きています。ところがこの連中、仕事も金もないけれど、明るいのです。いつも彼らに優しくしてくれる、好人物の海洋生物研究所の学者先生(通称ドク)のためにパーティを企画して恩を返そうとするのですが、もちろんそんなお金もありません。

バーテンのバイトをしている仲間がバケツに貯めた、客の飲み残しのお酒を持ち込んだり、ドクの依頼で採集した大量のカエルを雑貨屋に持ち込んで食料品を調達したりするのですが、ドクがいない間に研究所に入り込み、勝手にパーティを始めて酔いつぶれてしまったから、研究器具や蓄音機は壊すし、カエルには逃げられるしで、ドクに激怒されてしまいます。「俺は何をやってもダメなんだ」と肩を落とすマックに、「もう一度チャレンジしては?」と優しく勧める売春宿の女支配人。さあ、再度のパーティはどうなるのでしょうか・・。

というのが中心の物語なのですが、主役級だけでなく、端役の登場人物たちのエピソードもふんだんに登場して、何ともいえない心温まる物語に仕上がっています。同じ「缶詰工場」が舞台でも、小林多喜二の『蟹工船』とは、何という違いでしょう。もっとも、同じスタインベックでも『怒りの葡萄』はそっちに近い。地元を愛する気持ちが、文豪にこういう物語を書かせたのでしょうね。

ところで研究所のドクは、エドワード・リケッツという、実在のスタインベックの友人です。缶詰工場の跡に建てられた、モントレーの海洋水族館には、彼の業績を記念するコーナーもあるとのこと。もちろん、モントレーに行ったら、訪問してきますよ。キャナリー・ロウの水族館以外の部分はショッピングセンターやホテルになっていて、モントレー観光の一大スポットになっています。泊まってみたいけど、めちゃくちゃ高い! やっぱりダウンタウンの安モーテルかなぁ・・どこに泊まるか悩んでます。

2009/2