りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ノンストップ!(サイモン・カーニック)

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タイトル通り、「ノンストップの疾走感」をセールスポイントとするエンターテインメント作品です。

ロンドンの平凡な勤め人であるトムは、休日出勤中の妻に代わって2人の子供を世話するという、平凡な週末をおくっていました。それを破壊したのは、弁護士の友人からの1本の電話。どうやら、何者かに追われているらしい友人は、死の直前に自分の住所を告げているようなのです。危険を感じて、子供を連れて家を飛び出したトムに、次々と試練と謎が降りかかってくるのです。

案の定、何者かに襲撃され、最愛の妻は電話に出ず、警察に救いを求めると、わけのわからない容疑で逮捕されてしまう始末。どうやら複数の殺人が起きているようなのです。ようやく保釈されると、今度は偽警官に誘拐され、拷問を受けそうに・・。何か重大な秘密を知っているような妻は、行方も消息も知れないままで、トムは妻のことを信じられなくなっていくのでした。

何も知らずに事件の渦中に放り込まれたトムの視点と、背景事件の輪郭を知っていそうな捜査官ボルトの視点が、上手に組み合わされていますね。二転三転する物語の展開を追いながら、両者の視点を結びつけることによって、読者の想像と理解が進んでいきます。やはり、背後には黒幕がいたのですね。

ちょっと気になったのは、複数の登場人物の背景エピソードと、それぞれの問題の決着が、少しずつ書き込まれていること。脇役にも見せ場を作るために、ドラマ化や映画化を意識した欧米の小説にありがちなことなのですが、せっかくの疾走感が途切れてしまうようです。

2015/7