りぼんの読書ノート

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オリジン 上(ダン・ブラウン)

宗教象徴学者ラングドンを主人公とするシリーズの第5弾です。『天使と悪魔』、『ダ・ヴィンチ・コード』、『ロスト・シンボル』、『インフェルノ』の前4作も、トム・ハンクスが演じる映画化3作品も大ヒットしました。ローマ、パリ/ロンドン、ワシントンDC、フィレンツェを舞台とするサスペンスは観光案内のようであり、主人公に敵対する秘密組織の陰謀は現実離れしているにも関わらず、このシリーズは魅力的なのです。それは主人公の卓越した推理能力と意表を衝く展開のせいなのでしょう。

 

その魅力は本書にも満ちています。「すべて現実のものである」と冒頭に記されている建築物は、モンセラットの山並み、ビルバオグッゲンハイム美術館カサ・ミラサグラダ・ファミリア、モンジュイックの丘・・本書の舞台はバルセロナです。そしてゴーギャンの代表作である「われわれはどこから来たのか、われられは何者か、われわれはどこへ行くのか」が、そのまま本書のテーマになっています。

 

物語の発端は、ラングドンの元教え子で著名なコンピューター科学者であるカーシュが、驚くべき声明を発表したことでした。スティーブ・ジョブズを彷彿とさせるカーシュは、ついにこの問題に回答を見出したというのです。しかしグッゲンハイム美術館における発表の直前に、カーシュは額を撃ち抜かれて絶命。その場に呼ばれていたラングドンは、美貌の美術館長アンブラとともに、謎の解明に乗り出します。2人を助けるのは、カーシュが残した人工知能のウィンストン。カーシュを殺害した元海軍将校の背景にいるのは何者なのでしょう。そしてカーシュが証明した回答とはどのようなものだったのでしょうか。読者の興味を掻き立てながら、物語は続刊に続いていきます。

 

ところでグッゲンハイム美術館の正面に鎮座する、超巨大な子犬像「パピー」の写真を始めてみましたが、とてつもなく異様ですね。姿かたちは可愛い子犬なのに、4階建てのビルに相当する高さ12mの巨体を有することが、圧倒的な違和感を感じさせるのです。SNSには「可愛い」との声が溢れているようですが・・。

 

2022/6