りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オリジン 中(ダン・ブラウン)

宗教象徴学者ラングドンを主人公とするシリーズ第5弾は、生命誕生の秘密に迫るものでした。しかし「われわれはどこから来てどこへ行くのか」との問いに対する解答を得たというコンピューター科学者カーシュは、世界に向けて発表を行う直前に殺害されてしまいます。実行犯と関りがあるとみなされたラングドンは、逃亡しながら、カーシュが残した謎を追うことになってしまいました。

 

「生命の始まり」は「ビッグバン」と同様に、現代科学が及んでいない領域です。多くの自然現象や進化の謎が解明されつつある中で、数少なくなった「神の居場所」のひとつであることは間違いありません。ではカーシュを殺害したのは、事前に報告を聞かされていたという3人の宗教指導者のうちの誰かなのでしょうか。イスラム教指導者とユダヤ教指導者もまた殺害されてしまい、残るのはキリスト教指導者のバルデスビーノだけなのです。死期が迫るスペイン国王の古くからの友人である彼は、王室を陰謀に加担させてしまったのでしょうか。ラングドンと行動を共にしている美貌の美術館長アンブラが、スペイン皇太子の婚約者であるということも、問題を複雑にしています。

 

殺害実行犯の元海軍将校が、ローマに対する対立教皇を擁立した超反動的なパルマール教会員であったことは、初めの段階で知らされています。要塞のような教会を築いてフランコヒトラーを列聖するという実在の組織に動機があることは間違いないのですが、彼らにそこまでの力はなさそうです。彼らをカーシュ暗殺へと導いた者がいるはずなのですが・・。

 

ラングドンは、カーシュが遺した映像を見るための47文字のパスワードを追い求めます。ガウディの建築物カサ・ミラの最上階にあるカーシュの私室で手がかりを見出し、彼がサグラダ・ファミリアに寄贈したという稀覯書を手に入れようとするのですが、優秀なスペインの近衛部隊長もまたラングドンを追い詰めようといていました。犯人捜しよりも、生命誕生の秘密の方が興味を惹く展開になってきました。

 

2022/6