りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オリジン 下(ダン・ブラウン)

歴史を変えるという発表の直前に暗殺された天才科学者カーシュは、事前に予告していたように、人類の起源と未来に待ち構えている運命を完全に証明できていたのでしょうか。カーシュがサグラダ・ファミリアに寄贈していたウィリアム・ブレイクの手稿本から手がかりを得たラングドンのもとに、暗殺者が迫ります。正体不明の情報提供者や、ネット上で錯綜するフェイクニュースの発表者は誰なのでしょう。スペイン王室や宗教界は単に巻き込まれただけなのでしょうか。そして、先の見えない逃亡劇の果てにラングドンは何にたどりつくのでしょう。

 

秘密を追う物語は、往々にして過程のほうが秘密そのものよりも面白いのです。とてつもない大秘密を創作することは難しいのですから。しかし著者は数少ない例外ですね。『ダ・ヴィンチ・コード』でたどりついた秘密は厳粛な気持ちをもたらしてくれましたし、他の3作品においても実現可能性ギリギリのところにある大秘密だったといえるでしょう。

 

では本書で示された「われわれはどこから来て、どこへ行くのか」という問いに対する解答は、どこまでの信憑性があるのでしょう。本書の解説者によると「現在の技術では不可能であるものの、超人的な天才があらわれたら証明できるかもしれない」レベルにあるとのことです。つまり、小説的な信憑性はあるということなのでしょうか。ただしこれだけでは神は滅びないように思えます。

 

それよりも、ラングドンを支援していた存在がカーシュ殺害の黒幕であったということ、そしてそのような存在の登場のほうが、実現性は高そうです。ただしそのような発想は、アジモフが『ロボットと帝国』で用いた「ロボット工学第0原則」で既に示されていますね。アジモフの名前を挙げただけでネタバレになってしまいそうですが・・。

 

2022/6