りぼんの読書ノート

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メイズ・ランナー(ジェイムズ・ダシュナー)

SFミステリーとして映画化された原作本。「記憶を失って謎めいた世界に送り込まれた少年」というと、何やらロールプレイングゲームの始まりのようですが、まさにその通り。主人公のトーマスが危険な世界を生き延びていく中で自分自身を取り戻していく物語・・と思っていたのですが、本書はシリーズ第1巻にすぎず、物語は完結していません。

 

トーマスは高い壁に囲まれた謎のエリアの中で目覚めます。そこには数年前から、彼と同じように放り出された同年代の青年たちがコミュニティを作って暮らしていました。メンバーたちも全員記憶を失っており、かろうじて自分の名前だけを憶えていました。壁の内部と外部を隔てる巨大な扉は朝になると開き、夜になると閉ざされます。壁の外はグリーバーなる怪物が走り回る迷路ですが、外部に出るためには壁の中に閉じこもっているわけにはいきません。足が速く身体能力の高い者が「メイズランナー」として選ばれ、危険な迷路の攻略を試みているのですが、扉が閉じる前に戻れなかったランナーに命の保証はありません。

 

リーダーのアルビーや、友人となったチャック、なぜか彼を敵視するギャリー、ランナーチームのミンホらと共同生活を営み始めたトーマスでしたが、この世界に対して漠然と感じる既知感の正体は判明しません。しかしテレサという女性がこの世界に送られてきたことで、物語は急展開を始めます。記憶の一部を残していたテレサは「トライアルの終末の引き金が引かれた」と謎めいた言葉を発するのですが・・。

 

どうやらこの世界の「造物主」は「人類を救い種を保存する」目的で、実験を行っているようです。とりあえず3巻シリーズの最後まで読めばこの謎は解かれるのでしょう。しかし主題があまりにも類型的であり、展開にも登場人物にも魅力を感じられなかったので、このシリーズを読み進める気は起きません。

 

2022/6