りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

薄闇シルエット(角田光代)

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角田さんの本は、ある種の女性にとっては麻薬かもしれません。結婚していようが独身だろうが、働いていようが専業主婦だろうが、30代の女性がふと感じる「自分の人生、これでいいのか感」を上手に理解してくれて、「それでいいのよ」と言ってくれる。

本書の主人公ハナもそんなひとり。友人のチサトと2人で古着屋を立ち上げ、気がついたらもう37歳。気の合うチサトといれば楽しいし、仕事は順調だし、満足しています。でもある日、恋人から「結婚してやる」と言われ、違和感を感じます。「どうして、この人は『私が結婚を喜ぶ』と思って疑わないんだろう。どうして、こんなに一生懸命やってきた仕事を『続けてもいい』なんて、この人から許可されなきゃいけないんだろう・・。」

追い討ちをかけるかのように、母の死がハナの人生を自問させます。「家族のため」にケーキを作り、「娘のため」に手作りの服を作った母。ケーキだって、服だって、買ってきたもののほうが好きだったのに。母は、家族に、娘に、自分自身に、何を望んでいたんだろう。

いったん自分に疑問を持ってしまったら、自信は消える。「今までの生き方って、やりたくないことをしてこなかっただけ。自分で選んで掴み取ったものなんて、なんにもない。」

この本は、道に迷ったハナが自分を取り戻す物語です。もしあなたが同年代の女性だったら、ハナや、チサトや、ハナの妹に、自分を重ね合わせて共感しまうはず。そして、ハナと一緒に「これからなんでも掴める可能性がある」とうなずいている自分を発見してしまうでしょう。角田さんの本は、麻薬なのです。^^;

2007/3/10読了