りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

日曜日の空は(アイラ・モーリー)

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著者は、イギリス人の父と南アフリカ人の母を持ち、南アフリカで生まれ育った後、アメリカ人と結婚して、現在はカリフォルニアで執筆されている女性です。

アメリカ人男性の牧師と結婚し、故郷の南アフリカを離れてハワイへ移住したアビー。しかし、貧しいながらも平穏な暮らしは、一人娘のクララが交通事故で亡くなるまでのことでした。絶望に打ちひしがれたアニーの生活は地獄へと変貌してしまいます。夫の愛情も隣人の好意も信じられず、何より生きる希望が失われてしまったのです。

娘を失ったアニーは、既に亡くなっている両親のことを思い出します。アパルトヘイト主義者で、進学した優秀な一人息子が改革派になって家を飛び出したことに耐えられず、さらに母の浮気を疑って、母を虐待し続けていた父。幼いアニーにまで危害が及ぶことを恐れ、アニーを祖母に預けてひとり家に戻り、黙って父に虐待されるままになっていた母。母もまた、ある意味で「子どもを失った母」であったのかもしれないと、アニーは絶望の中で思います。

しかし本書は「再生の物語」です。祖母の農園を売却するために生まれ育ったケープタウンを訪れたアニーが知ったのは、子供たちのために闘った母の真実の姿と、自分の身体に潜んでいた生命への活力。彼女を絶望の淵から蘇らせたものは、いったい何だったのか・・。

本書には南アフリカの貧困や犯罪も、そこで自暴自棄な人生をおくるしかない若者の姿も描かれています。もちろんそこはパラダイスではありません。しかし何よりも「生命の強さ」を感じさせてくれるところなのかもしれません。

何度かヨハネスブルクに出張した時には、犯罪を恐れてホテルと会社を往復しただけ。もったいないことをしたようにも思えますが、これは仕方ありませんね。現地の女性も、クルマの中にショットガンを常備しているような国なのですから・・。

2009/9