りぼんの読書ノート

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夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)

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森見さん、いいですねぇ~。「黒髪の乙女」に想いを寄せる「先輩」の可愛いストーカーぶりが最高!黒髪の乙女」の天真爛漫ぶりも最高!

春の夜、先斗町木屋町界隈の居酒屋街の探検にそぞろ歩く乙女。真夏の下鴨納涼古本市を、昔手放した絵本を探して歩きまわる乙女。晩秋の学園祭で緋鯉を背負い、ゲリラ演劇の主役を演じ歩く乙女。Xmas直前に大流行の悪性風邪に1人かからず、見舞いに出歩く乙女。二足歩行ロボットのステップと、「おともだちパンチ」が得意で、李白老を圧倒するほどの酒豪で、オモチロイことが大好きで、不思議なことに出会ったら、「なむなむ」と唱える天然乙女。

乙女を追って、吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で「偶然の出逢い」を頻発させ、「たまたま通りかかったもんだから」の台詞を喉から血が出るほど繰り返し、同時に本に手を伸ばす技に熟練し、彼女の後姿の世界的権威となりながら、彼女の物語の一部にはなれず、「路傍の石ころ」たる存在に甘んじる先輩。でも先輩には「必殺技」があったのです。それは、現実と妄想とを混沌の中で融合させてしまう恐るべき技。

ひょっとしたら、素晴らしい脇役たちも妄想の産物なのかも。ど派手な「自家用三階建て電車」で京都の街に出没する、李白老人。飄々とした浴衣姿で浮遊術を使い、天狗を自認する樋口さん。少年の姿で現れ、古本をあるべきところにただす、古本市の神様・・。

太陽の塔』では、周囲を睥睨するかのごとくに巨大に膨れ上がったプライドと妄想がせめぎ合っている京大生を描いた森見さんですが、本書の「先輩」は、恋心に煩悶するくらいに、謙虚で可愛い。大仰な言葉で隠しても、天真爛漫な女性なら、そういう可愛さは見破れちゃうのです。^^

2007/3/8読了