りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

泣いたらアカンで通天閣(坂井希久子)

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前月に読んだウィメンズマラソンが面白かったので、他の作品も手に取って見ました。

コテコテの大阪・新世界を舞台にした本書は、まるで十数年後の『じゃりん子チエ』。放蕩親父ゲンコと、しっかり者の一人娘センコを中心に繰り広げられる人情悲喜劇。不味いラーメン店の親父であるゲンコのキャラは、ほとんどテツですね。しかしセンコ(本名:千子=チネ)の方は、天真爛漫なチエのままではありません。父親ゲンコの世話に手を焼きながらも、東京から転勤してきた上司との不倫で苦しんでいます。最近ぼんやりしているおばあやんのことも、気にかかります。

それでも、ここは新世界。下町商店街の狭い社会で、三代に渡る昔馴染みたちが入り乱れる様子は、時に暖かく、時にうっとうしい。東京の銀行に就職したはずの質屋の息子カメヤを、なぜ最近姿を見かけるのか。ゲンコの父は、なぜ秘伝のラーメンの作り方をゲンコの亡妻にしか伝えなかったのか。商店街の問題児スルメは、なぜいつもひとりでいるのか。そもそもゲンコは、なぜマドンナ典子さんと結婚できたのか。

「じゃりん子チエ」でも、テツが美人のヨシ江さんと結婚できたことが、大きな謎だったように思います。コミックでの「理由」は別として、本書でのゲンコと典子さんのエピソードは、その疑問への「正解」のように思えてすらしまいます。そしてセンコもまた、同じような人生を歩み始めるのです。あ~、ネタバレ書きたい!

2016/10