りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

トム・ハザードの止まらない時間(マット・ヘイグ)

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「遅老症」なる超長生きの遺伝子を有する人々が、ごく少数存在するという設定のSFです。主人公のトムもそのひとりで、4世紀以上の年月を生きているのですが、長生きと幸福とは必ずしも両立するものではないようです。

成長の遅い息子を生んだことで魔女狩りにあって処刑された母親。ペスト禍で亡くなった妻。愛する人を失うのは宿命なのですが、彼の遺伝子を受け継いだ一人娘は精神を病んで行方が知れません。そして現在は、遅老症の人々による謎の組織のもとで、秘密の任務に携わっています。新しく発見された仲間の勧誘や、8年ごとの身元変更のみならず、変更漏洩を防ぐための手荒い仕事もこなしていたのです。

そして400年ぶりにロンドンに戻ってきたトムに、長い間止まっていたかのような時間が動き出します。禁断の恋愛に落ち、遅老症仲間ながら組織に属さない旧友の殺害を命じられ、そして行方不明だった娘の居所まで知ることになるのですが・・。

奇抜な設定ながら内容的にはラブロマンスなのですが、ラストの決意がいいですね。「時間を止める方法は、時間に支配されるのをやめることだ」というのですから。「愛という錨のない人生は漂流にすぎない」そうです。

2019/5