りぼんの読書ノート

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多々良島ふたたび - ウルトラ怪獣アンソロジー(山本弘ほか)

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ウルトラシリーズ」世代の7人の作家による、オマージュ作品集です。原典を知らなくても、シリーズを貫く世界観さえわかっていれば楽しめるはずです。

「多々良島ふたたび(山本弘)」
レッドキングやガラモンが登場した「怪獣無法地帯」の多々良島に、測候所で生き残ったメンバーが再訪。しかしそこでは、ウルトラマンに敗れたチルソニア遊星人が復讐を誓っていたのです。「ウルトラマン」でフジアキコ隊員を演じた桜井浩子さんは、「ウルトラQ」では新聞カメラマンの江戸川百合子だったのですね。

「宇宙からの贈りものたち(北野勇作)」
巨大生物の退治に挑む青年の想いが、虚実を彷徨います。彼は火星に取り残された宇宙飛行士なのでしょうか。それとも近所の防災団のメンバーなのでしょうか。

「マウンテンピーナッツ(小林泰三)」
過激な環境保護団体が怪獣を保護してウルトラマンに立ち向かうなんてことは、当時の製作者は考えもしなったのでしょうね。ウルトライブした女子高生は、苦悩してしまいます。しかし元宇宙飛行士であったジャミラは、保護の対象にはならないのですね。

「影が来る(三津田信三)」
江戸川由利子のドッペルゲンガーは、なぜ誕生してしまったのでしょう。そしてそれを消し去る方法はあるのでしょうか。この世代のおじさんたちには、江戸川百合子のファンが多いようです。

「変身障害(藤崎慎吾)」
なぜモロボシ・ダンは、ウルトラセブンに変身できなくなってしまったのでしょう。それともウルトラセブンだったという過去は、妄想にすぎないのでしょうか。治療のために訪れた精神科医や患者たちは、全員が元宇宙人であり、彼らも変身障害に悩んでいたのですが・・。

「怪獣ルクスビグラの足型を取った男(田中啓文)」
決死の覚悟で怪獣の足型を採取する男たちの、熱いドラマが展開されます。でもこれは現実なのでしょうか。

「痕の祀り(酉島伝法)」
巨大な斉一顕現体と万状顕現体の死闘は、光学的錯覚ではないようです。なぜなら闘いの跡には、巨大な屍体が残されているのですから。特殊清掃業者たちの出番ですが、彼らは「特捜隊」ではなく「特掃隊」だったのですね。

2019/5