りぼんの読書ノート

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書店主フィクリーのものがたり(ガブリエル・ゼヴィン)

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ともに本好きな若い夫婦が開いた、島に1軒だけの小さな本屋。しかし妻の事故死によってひとりになった夫フィクリーは偏屈になり、大切にしていた稀覯本も盗まれて打ちひしがれてしまいます。そんなある日、書店に捨てられていた小さな子供マヤを手放せなくなり、養女にして育て始めたことで全てが変わっていきます。フィクリーとマヤを気遣って、島の人たちが書店を頻繁に訪れるようになるのです。

次第に本好きが増えてくる環境の中で、マヤも本好きになってすくすくと成長していきます。マヤが捨てられていた事情や、稀覯本を盗んだ犯人なども明らかになりますが、それはもう物語の本筋ではありません。フィクリーは、再び恋などもしてしまうのです。

「人は孤島ではない」というテーマを含むハートウォーミングな物語ですが、まずは目次を見ることをお勧めします。各章のタイトルはフィクリーが好む作品であり、フィクリーが書いたとされる短評までついているのです。彼の理屈っぽさを理解してストーリーに入っていくことが、本書の味わいを深めてくれます。フィクリーを囲む、義姉イズメイ、警察署長ランビアーズ、出版社営業のアメリアなどの物語もまた、本書の奥行きを深めているのです。

2019/5