りぼんの読書ノート

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夜の虹彩(瀬名秀明)

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出版芸術社の「ふしぎ文学館」から出版された本書は、幻のデビュー作「翳りゆくさき」から2013年時点での最新短編「擬眼」までを含む、未収録作品集です。3部構成になっていて、第1部「果てしなき闇」がホラー、第2部「鉄人の夜」がオマージュ、第3部「未来と古里」がSF&ファンタジーとなっています。

第1部で印象に残ったのは「Gene」。博士課程でヒトゲノムの研究をしている女性の現実世界が、悪魔の遺伝子を解析するゲームの世界と交錯していく物語。『パラサイト・イブ』でデビューした著者ですから、遺伝子関係は得意ネタですね。他は、集団飛蚊症流行の恐怖を描いた「眼球の蚊」、人類共通の原初記憶をテーマにした「最初の記憶」、ホラー小説家が死んだはずの妻と娘から交信を受ける「翳りゆくさき」

第2部は「プロメテウスの悪夢」1作から成り立っています。金田正太郎少年、友人の敷島鉄男少年と父親の敷島博士、大塚署長などのレギュラーメンバーが、牧村博士のもとから逃げ出したロボット・ロビーの行方を追いかけます。世界唯一の自我を持つロボットであるロビーは、巨大ロボット・ギルバートを操るドラグネット博士からも狙われていたのですが・・。

第3部は、SF定義を巡るスラップスティック作品の「SOW狂想曲」、人類の大半が着用する視力強化ロボが反乱する「擬眼」、骨董の時計が時を左右する「黄昏柱時計」、若者たちの未来に期待する「AIR」「はるかな町」など。

2017/1