りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

竜宮電車(堀川アサコ)

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ちょっと不思議な内容の3編の小説が、不思議な繋がりを有している連作短編集です。

「竜宮電車」
27歳のシステムエンジニアがよく見る夢は、上手くいかない現実をなんとかしてくれるという竜宮電車に乗ろうとしても、切符がなくて乗せてもらえないというもの。一方の現実では、会社が倒産して恋人にも去られてしまいます。しかも恋人が出ていく際の諍いで、模型の竜宮電車が机から落ちて壊れてしまうのですが。彼は這い上がることができるのでしょうか。

「図書館の鬼」
図書館にある「鬼」という文字がタイトルに入った本を、年の数だけ読むと願いが叶うという噂は本当なのでしょうか。綺麗なのに世渡り下手で口うるさい母親のことを窮屈に思っていた少年でしたが、あと1冊が手に入りません。そんな時、認知症の母親を持つ担任の女教師の家に、「鬼」の本が大量にあるのを見てしまいます。女教師の夢は叶ったのでしょうか。

「フリーター神さま」
流行らない神社に祀られている霊験も薄い神が、ハローワークで紹介された花屋には、竜宮電車のスノードームが飾られていました。小学校の同級生だったという、花屋の女主人、神社の奥さん、小学校の女教師、ゴミ屋敷に住む女の4人の関係は、好転するのでしょうか。

どうも竜宮電車の霊験とは、心がけ程度にしか思えないのですが、それが一番重要なことなのかもしれません。「中途半端な結末でありながら爽やかな読後感」というのが、著者独特の持ち味に思えてきました。著者は、人間に交じってバイトをしている神様のことが気に入ったようで、水中少女という続編も出ています。

2018/9