りぼんの読書ノート

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レス・ザン・ゼロ(ブレット・イーストン・エリス)

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1985年に出版された本書は、ロサンゼルスを舞台にして、裕福な家庭で何不自由なく暮らす若者たちがドラッグやセックスに溺れて暮らすという、なんとも救いようのない作品です。登場人物たちとほぼ同世代の青年が書き上げた作品ということで話題になり、「ジェネレーション・ゼロ」とか「ジェネレーションX」という言葉まで生み出しています。

 

ストーリーはないに等しいのですが、東部の大学に進学したクレイが、ロスに戻ってクリスマス休暇を過ごした一冬の物語。冒頭で、空港にクレイを迎えに来た恋人ブレアがつぶやいた「ロスのフリーウェイは合流するのが怖い」という言葉が象徴するように、西海岸の名門大学に進学したかつての友人たちとの再会は、次第に救われないものになっていきます。仲間同士のドラッグやセックスから、さらに刺激を求めてエスカレートしていく様子は、狂気すら感じさせるほど。

 

ついには、ドラッグ中毒になって家族からも見放された以前の親友ジュリアンが、金のために男娼へと身を落とし、ついには命を失うことになってしまいます。ブレアとも別れて、東部へと戻って行くクレイの姿には、過去との決別とか、新しい道への船出とかいう言葉とは無縁のようです。

 

本書の9年前に書かれた限りなく透明に近いブルー村上龍)』と近いものを感じますが、退廃が狂気へとエスカレートしていくのはアメリカだからなのでしょう。日本的な土壌においては、退廃は喪失感へと変貌していったようです。

 

2018/9