りぼんの読書ノート

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ゴーストハント5 鮮血の迷宮(小野不由美)

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ゴーストハント」と改題された旧「悪霊シリーズ」の第5作は、荻原規子さんや辻村深月さんをはじめ多くの読者が「最恐」と述べている作品です。ただし本書の怖さは西洋的であり、私には第2作『人形の檻』のような日本的なもののほうが恐ろしいと思えます。恐怖感覚にも個人差があるのでしょう。

 

今回「渋谷サイキックリサーチと仲間たち」が訪れたのは、長野県の山中にあって、増改築を繰り返し迷宮のような構造を持つ巨大な洋館・美山邸。そこで複数の行方不明事件が発生したというのです。元首相夫人の実家が保有していたこともあり、国内外の名だたる霊能者や心霊研究者たちも召集されていたのですが、中にはいかがわしい者も混じっていそうです。調査を進める中で、若い霊能者たちが次々と失踪。この館に潜んでいる強大な力の背景には、どのような秘密があるのでしょうか。そしてその邪悪な力は、麻衣たちにも襲い掛かってくるのでした。

 

この館のモデルは、狂気の建築として有名な、カリフォルニアのウィンチェスター館のようです。この館からヒントを得たホラー小説も多数書かれたとのことです。吸血鬼伝説が言及されていることも、本書から溢れ出てくる西洋的なパワフルな怖さの源流となっています。

 

ところで、はじめは普通の女子高生にすぎなかった麻衣のパワーはエスカレートする一方です。過去視や透視のみならず体外離脱まで行ってしまうのですが、まだ自力でコントロールできるレベルには達していません。麻衣の家族はみな早死にしており、彼女が天涯孤独の身であることも明かされましたが、所長のナルの身元を含めてまだまだ謎は多いのです。全7巻のシリーズのラストで、それらの伏線が回収されていくのでしょう。

 

2021/1