りぼんの読書ノート

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ゴーストハント4 死霊遊戯(小野不由美)

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ゴーストハント」と改題された旧「悪霊シリーズ」の第4作。ごく普通の女子高生である谷山麻衣のバイト先は、17歳の美少年ナルが所長を務める渋谷サイキックセンター。陰陽師らしき助手のリンさんをはじめ、仕事でチームを組む、拝み屋のボーサンこと滝川、エクソシストのジョン、巫女の綾子、タレント霊能者の真砂子らはそれぞれ能力を有しているようですが、ナルの正体はまだ不明です。

 

今回メンバーが除霊を頼まれたのは、最近奇怪な事件が立て続けに起こってマスコミを賑わせている高校でした。校内には、よくある七不思議の数十倍というおびただしい数の怪談や怪奇現象が満ちており、4カ月前には生徒の飛び降り自殺事件まで起きていました。それは多くの生徒たちが熱中していたという「ヲリキリさま」と呼ばれる奇妙な占いと関係しているのでしょうか。それはよくあるこっくりさんの亜種とは異なるのでしょうか。そして「霊の蠱毒」とはどのような現象で、それはどのようにして除霊できるのでしょうか。

 

なんとも後味の悪い事件でした。不特定多数の者による無意識の悪意は恐ろしいものですが、現代のネット社会においてそれは桁違いに怖いものとなっているのですから。だから私たちは、無意識にでも呪詛を行った生徒たちに呪詛を返すというナルの方針の正しさを理解できるのです。本書が書かれた1990年当時の麻衣は、その解決法に反対だったわけですが、今ならわかってもらえるのでしょう。

 

ところで麻衣は単なる無力な雑用係ではありませんでした。彼女が見る不思議な夢は、単なる恐怖心の現われではなく、一種の予知能力であったようです。そういえば読者は麻衣のことを何も知らされていませんね。全7巻のこのシリーズを貫いているというテーマは、彼女の物語なのかもしれません。

 

2021/10