りぼんの読書ノート

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エバ・ルーナのお話(イサベル・アジェンデ)

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シェヘラザードのように物語を紡ぎ出す能力をもって、混迷する世界を逞しく生き抜く少女エバ・ルーナが、ついに巡り合った運命の人・ロルフに語る「お話」が23編も詰まっている「別巻」です。まるで神話のような物語群ですが、大半はエバが暮らしたアグア・サンタを舞台にしており、本編に出てきた人物も登場しています。

選挙用に完璧な演説を買った勇士が、おまけに貰った言葉で骨抜きにされてしまう「二つの言葉」。義理の娘に誘惑されかけたことを生涯忘れられない男と対照的な「悪い娘」。生涯でたったひとつ犯した罪を告白する尼僧の「クラリーサ」。カウボーイたちを手玉にとったあげくに去って行った女が遺したゲームヒキガエルの口」。夫に虐げられ続けた妻子の痛烈な仕返しを描いた「トマス・バルガスの黄金」

47年幽閉されながら男を慕い続けた女の運命が逆転する「心に触れる音楽」。高貴な女に贈るべきものは宝石ではなく笑わせることだという「恋人への贈り物」。我儘女が人生の主人公は自分が捨てた夫と息子だったと気づく「トスカ」。侵略者の性奴隷にされた部族の女の精霊を密林に解き放つ「ワリマイ」インディオの呪術で密かに愛していた女性を救った医師のエステル・ルセーロ」。頭の弱い純粋な女性が神話的な娼婦になる「無垢のマリーア」

心の奥に潜めていた裏切りの記憶が蘇る「忘却の彼方」。40年もの間ダンスパートナーだった女性にようやくプロポーズした理由が楽しい「小さなハイデルベルク。女のために命を落とすと予言された男の運命を描いた「判事の妻」。障害を持つ息子に養子縁組を持ちかけた女の正体が恐ろしい「北への道」。リアド・アラビーが町に受け入れられたきっかけを語った「宿泊客」。成り上がりの悪党夫婦が上流階級の仲間入りをしようと悪戦苦闘する「人から尊敬される方法」

人道上の安楽死を解く医師が、最後に恋人に頼んだことがせつない「終わりのない人生」バチカン非公認の聖女フアナが起こした「つつましい奇跡」。父を殺した男を25年後に愛してしまった女が行う「ある復讐」。夫の死後にラブレター代筆者に気付く「裏切られた愛の手紙」。忘れられた女が忘れられた部族と暮らす「幻の宮殿」

そして最後の物語は、エバとロルフのその後を描いた「私たちは泥で作られている」。泥に埋まった少女を救出できなかったことで悪夢の中へ入り込んでしまったロルフは、エバが待つ世界に戻って来ることができるのでしょうか。

2018/8