りぼんの読書ノート

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消えた少年(東直己)

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映画化された探偵はバーにいるにはじまる、札幌版ハードボイルド「ススキノ探偵シリーズ」の第3作です。

主人公は、札幌の歓楽街ススキノのバーを拠点とし、借金の取立てやもめ事の仲裁で小銭を稼いでいる便利屋の男性。かつて男たちに絡まれていたところを助けたことがある若い女性教師から頼まれ、怪しい場所から連れ出した中学生が、今度は行方不明になってしまいます。しかも一緒にいた親友は惨殺死体となって発見されたというのですから、これはただ事ではありません。

これは変質者による誘拐事件なのか。暴力団が絡む陰湿な事件なのか。それとも学校を巻き込んでいる障害者施設反対運動に関係があるのか。主人公の探偵が捜査を進める過程で窮地に陥っていくのは、ハードボイルドのお約束ですね。しかし今回の相手は、格闘家系の旧友・高田をも超えるパワーを持っていたのです。「ほろにがい真相」もまた、ハードボイルドのお約束のひとつなのですが、今回の事件では微妙な感じです。

ところで事件の舞台になった札幌の手稲地区は、明治政府直轄で開拓が進められた札幌とは別に、旧幕府の各藩によって入植された地域だそうです。初期開拓者たちの苦労は別として、その子孫が地主となり、地元の有力者となっているケースも多いのでしょう。ちょっと横溝正史的なテイストも感じる作品でした。

2018/7